自由診療が多い歯科医療法人の持分対策

はじめに

歯科の医療法人から承継における持分の納税対策についてご相談を受けることが多いです。ただ、歯科の場合は自由診療をどれだけ増やすことが出来るかが経営戦略のカギの1つである一方、自由診療の収入割合が2割以上の場合は認定医療法人制度を使うことが出来ません。

そこで、自由診療割合が高い持分あり医療法人の持分承継対策についてご説明させていただきます。

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自由診療の収入割合が高い持分あり医療法人の持分承継対策

背景

歯科においては特に事業承継後に若い後継者に代替わりしたら、自由診療をいかに増やすかを考えてらっしゃる後継者の方々が多いです。

親族内承継の持分あり医療法人は後継者が頑張れば頑張るほど将来の出資承継の納税額が高くなる、出資はお金ではないので納税資金を別途準備しないといけない構造は同じですではあるものの、無税で出資持分対策が可能な認定医療法人制度の要件の1つに「社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)にかかる収入金額が全収入金額の80%を超えること」という要件がありこれを6年間維持する必要があるため、特に自由診療に力を入れている歯科医療法人は認定医療法人制度を活用することが出来ない場合が多いと考えられます。

代替策

このような歯科医療法人における代替策として考えられる生前対策としては、いずれも納税は発生しますが下記の方法になります。

  1. 認定を受けずに持分なし医療法人へ移行
  2. 生前贈与(暦年贈与or精算課税贈与)

認定を受けずに持分なし医療法人へ移行する場合のメリットとデメリット

上記の生前対策のうち「①認定を受けずに持分なし医療法人へ移行」する方法は医療法人のみが使える(株式会社では使えない)スキームになります。

生前の持分なし医療法人への移行のメリットは下記のとおりです。

  1. 法人の経営が順調で毎年株価が上がり続ける場合でも株価上昇による税負担がなくなる
  2. 二次相続以降の税負担がなくなる
  3. 相続人個人ではなく法人に相続税の納税を代わりに払ってもらうことができる
  4. 認定医療法人制度のように要件を6年間満たし続ける必要はないので、自由診療を増やしていくことも可能

また、デメリットは下記のとおりです。

  1. 持分がなくなること、つまり払戻請求権や残余財産分配請求権がなくなること(ただし、役員退職金等による対策は可能です)
  2. M&Aのスキームが減る(持分譲渡スキームや持分払戻スキームは使えなくなる、退職金による清算のスキームは引き続き使うことは可能)
  3. 認定医療法人制度の場合は無税で持分対策が出来るが、この方法の場合は納税が発生する場合がある

生前の持分対策のタイミング

上記⑵の生前対策を行うタイミングとしてはたとえば下記のような出資持分の相続税評価額が下がっているタイミングで行うことにより、納税額を低く抑えることが可能となります。

  1. 承継のタイミング(先代に対する役員退職金の支給により出資持分の相続税評価額が下がるので)
  2. 設備投資(土地や建物は3年経過後)や修繕、その他の大きな支出があるタイミング
  3. 大きな生命保険契約の加入のタイミング

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