3月決算の医療法人の業務(顧問税理士等が留意すべき事項)

事業報告書等の都道府県への届出と登記

医療法人は毎会計年度終了後3か月以内に事業報告書等や監事監査報告書を都道府県知事へ届出しなければなりません。医療法やモデル定款では原則3月決算(定款で別段の定めは可能)となっているため、特に病院のある医療法人では3月決算法人が大半と思われますが、この場合は6月末までに事業報告書等と監事監査報告書の提出が必要です。

なお、資産総額の登記は毎会計年度終了後2か月以内(3月決算の場合は5月末まで)に行う必要があります。

これらの情報は事業報告書等については各都道府県(一部は市役所)のホームページから閲覧をすることが出来ます。こちらからは、法人全体としての売上や純資産、設立年月日、持分の有無等を確認することが出来ます。

例)東京都ホームページ「定款・寄附行為及び事業報告書等の閲覧方法のオンライン化について(令和7年3月26日更新)」
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/hojin/etsuranonline

また、登記については有料ですがこちらの登記情報提供サービスで確認することが出来ます。こちらからは設立年月日や理事長の氏名住所、純資産額等を確認することが出来ます(売上規模や持分の有無等は確認することはできません。)。
https://www1.touki.or.jp/gateway.html

届出や登記を行っていない場合の罰則

医療法人の中には事業報告書等をちゃんと提出していなかったり登記をしていないところが稀に見受けられます。事業報告書等について届出をしていない場合や虚偽の届出をした場合、また登記を怠ったり不実の登記をした場合は、刑が科される場合を除き理事や監事等に20万円以下の過料が課されます(医療法93条)。

また、医療法54条の配当禁止規定に違反した場合も同様に過料が課されます。東京都の資料では、役員等特定の人のみに対する役員社宅や役員貸付も剰余金の配当とみなされるとされています。

「なんだ20万円払えばよいのか」ということではなく、いつもでも解消されなければ医療法上は立入検査や報告徴収、改善命令、役員解任勧告や業務停止命令、最終的には設立認可の取り消しになり法人解散につながりうることとなります(医療法63条~66条)。

税務申告期限の延長

本来であれば3月決算の医療法人の法人税や消費税、地方税は5月末までに申告が必要ですが、医療法人も申告期限の延長が可能です(納税は延長できません)。 例えば3月決算法人であれば定時社員総会が3月と5月に開催と定款に規定されていると思われますが、そもそも事業報告書等の都道府県知事への提出期限が3ヶ月以内なので、定款の定時社員総会を6月に変更する等により延長申請をおこないます。なお、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに延長申請を行う必要があります。

(参考)国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_12.htm

経営情報等の提出(MCDB制度)

上記の他に主たる事務所の所在地の都道府県に毎会計年度終了後3か月以内(3月決算の医療法人の場合は6月末まで)にMCDB制度により経営情報等の報告も必要となります(公認会計士又は監査法人の監査を受ける医療法人は4か月以内)。

こちらを怠った場合の個別の罰則規定はありませんが、上記と同様の立入検査や報告徴収、改善命令、役員解任勧告や業務停止命令、認可取消の対象にはなります。

(参考)厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177753_00005.html

最後に

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