東京都の資料に医療法人の禁止行為の主な例が記載されています(東京都福祉保健局医療政策部医療安全課医療法人担当「令和5年度版医療法人制度の概要」P16〜17)。
まず、下記のものは医療法人が行うことが出来る業務範囲の観点から禁止行為とされています(厚生労働省「医療法人の業務範囲」より)。
※社会医療法人が行う収益業務は除かれます。
ただし、病院等の患者・家族に対し、医療提供、療養の向上の一環として行われるもの(病院内の売店)は附随業務(として認められる)とされています。
また、下記のものは医療法54条の配当禁止規定の観点から、剰余金の配当とみなされる例として禁止行為とされています。
決算後生ずる利益剰余金は積立金とし、施設改善や従業員の処遇改善等に充てるのが適当としています。
上記の禁止行為のなかで特に注意する必要があるのは下記の3点です。
特に役員貸付金が計上されていて、それを解消するように都道府県から顧問税理士に連絡が入ることも多々あります。
なお、M&Aの際に特にご質問が多いのは下記の2つです。
1については、医療法的な観点からは、認定医療法人や特定医療法人、社会医療法人については一定の制限が生じます。例えば認定医療法人の場合は、理事報酬は年間3,600万円(医師給与と合わせても年間5,000万円)以下となり、役員退職金については功績倍率法で功績倍率は最大3倍(そのほか功労加算として30%)が実質的な上限になります。しかしながら、これらに該当しない通常の医療法人については、上記の東京都の資料にも記載がないように、役員給与や役員退職金について、いくら以上であれば配当類似行為になり禁止されるのか明確な規定は見当たりません(なお、配当類似行為とされた場合は、20万円以上の過料に処せられるだけでなく、立入検査・報告徴収⇒改善命令⇒役員解任命令・業務停止命令まで至り、最終的には医療法人の認可取消⇒解散となる可能性があります。)。税務上の取扱いは、税務上の上限を超える部分の金額は法人税の損金に算入されませんが、退職金の受給者側では法人税の上限を超える部分を含めて退職所得として所得税が課税されます。
2については、売り手と買い手の間で親族関係や資本関係・取引関係・人的支配関係等があったり、租税回避の意図や売り急ぎや買い進み等の特殊な事情がある場合を除いて、基本的には純然たる第三者間で公正に合意した譲渡金額を税務上の時価として取り扱い、贈与税課税は生じないと考えられます(親族間や資本関係等がある場合は、財産評価基本通達194‐2、法人税基本通達9-1-14、所得税基本通達59‐6等で時価を算定します。)。
なお、税務上(相続税法上)の時価とは、課税時期において、それぞれの財産の状況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額(相続税法22条、財産評価基本通達1⑵)であり、売り急ぎや買い進み等の特殊な事情がない場合に成立する価額であり、取得原価や処分価額とも異なる、その価額ならばいつでも正常な状態で他の財貨と交換できる、すなわち客観的な交換価値を示す価額をいいます。
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