令和8年度税制改正において下記の内容の制度が創設される予定です。
ここでいう「内国法人」と「関連者」には医療法人とMS法人の関係も含まれると考えられることから、これらの法人間における取引についても改正内容が適用されるものが生じると考えられます。
(財務省「税制8年度税制改正の大綱」より)
内国法人が関連者との間で特定取引を行った場合において、その取引に関して、取引関連書類等にその取引に関する資産又は役務の提供の明細、その取引においてその内国法人が支払うこととなる対価の額の計算の明細等のその取引に係る対価の額を算定するために必要な事項の記載又は記録がないときは、その記載又は記録がない事項を明らかにする書類(電磁的記録を含む。)を取得し、又は作成し、かつ、これを保存しなければならないこととする。
医療法人とMS法人との特定取引(例:経営管理、経営指導等)についての書類に、対価の額を算定するために必要な事項の記載等がない場合には、その内容を明らかにする補完書類の保存等が必要となります。補完書類の保存がない場合は青色申告の取消となります(令和8年4月以降の特定取引について適用予定)。
特に医療法人とMS法人で昔から行われているが根拠が曖昧な経営管理や経営指導等は注意が必要です。対価の額の算定根拠があるのであれば取引関連書類にその記載をするか、根拠となる補完資料を具備しておく必要があります。
また明確な根拠がない場合は当該改正により青色申告の取消となるだけでなく、そもそも場合によっては重加算税が課税される可能性もあります。
(参考:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」より)
(隠蔽又は仮装に該当する場合)
1 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。
(中略)
(2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。
(中略)
②帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。
前出の財務省令和8年度税制改正の大綱では、「移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する。」とされていますが、「国外」関連者とされていないことから内国法人も含みます。
国税庁の「Ⅱ 移転価格税制の適用におけるポイント」では、「法人との間に、50%以上の株式等の保有関係(親子関係、兄弟関係等)や実質的支配関係(役員関係、取引依存関係、資金関係等)といった特殊の関係がある」関係とされていますが、持分あり医療法人とMS法人の関係はほとんどが兄弟関係(例:理事長とその親族が医療法人とMS法人の両方に対して100%出資)に該当し、持分なし医療法人とMS法人との関係も役員関係(例:本来は認められない可能性がある医療法人とMS法人との役員兼務)や取引依存関係(例:MS法人の事業活動の相当部分を医療法人との取引に依存)に該当することが多いと考えられます。
財務省令和8年度税制改正の大綱では下記のとおり説明されています。
シェアードコスト取引等を想定した改正内容であると考えられますが、医療法人とMS法人との取引についても、経営管理指導(下記②ロ)や不動産・動産等の賃貸(下記②イ(ロ))が該当すると考えられます。また業務委託については当該文章だけでは不明確な部分もありますが下記②ハに該当する可能性があります。
(財務省「税制8年度税制改正の大綱」より)
上記の「特定取引」とは、次の取引(販売費、一般管理費その他の費用の額の基因となるものに限る。)をいう。
① その関連者がその内国法人に対して行う次の資産(以下「工業所有権等」という。)の譲渡又は貸付け(工業所有権等に係る権利の設定等その関連者がその内国法人に工業所有権等を使用させる行為を含む。)
イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの
ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)
ハ プログラムの著作物
② その関連者がその内国法人に対して行う役務の提供のうち次のもの
イ 次のいずれかの事業活動で、その内国法人とその関連者との契約又は協定に基づきその関連者が行うもの
(イ)その関連者が有する産業、商業又は学術に関する知識経験等その関連者が有する経営資源を活用して行われる研究開発、広告宣伝等の事業活動
(ロ)その関連者が有する専用資産(専らその内国法人及び関連者の事業の用に供することを目的とする資産をいう。)をその内国法人に使用させる行為並びにその専用資産の維持及び管理
ロ その関連者がその内国法人に対して行う経営の管理又は指導、情報の提供等の役務の提供でその関連者が有する産業、商業又は学術に関する知識経験に基づき行うもの
ハ 上記イ及びロの役務の提供に類するもの
本稿はあくまで現状知りうる情報を基にしたものであり、今後これに関する法令や関連規定が公表されることにより本稿の記載内容と一部異なる適用関係が生じる可能性がありますので、予めご了承ください。
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