相続税対策として出資を子供や孫などできるだけ多くの親族に分散して贈与しているケースを見かけます。特に顧問税理士が良かれと思って勧めるケースが多いと思われます。分散贈与は当面の税金対策にはなるかもしれませんが、後々のことを考えると悪手です。
また、法人設立時の事務長や管理医師を出資者に加えている医療法人もあります。
分散贈与や設立時の事情により出資が分散している場合、下記の理由で困っている老舗の病院やクリニックはたくさんあります。
出資が分散しているとM&Aの際の売り手利害関係も多数に上ることになり非常に困ることになりかねません。
例えば「分散した先でさらに相続が発生するなど、誰が出資者か法人で把握出来なくなっている」ことや、「出資者AはM&Aに賛成しているけど、出資者Bの配偶者は譲渡対価に納得していないためM&Aが成立しない」というような事例もあります。
親族内承継の場面でも下記のような理由で出資が分散して困っている法人は多くあります。
「税金を減らすために分散贈与しているのに、結局税金が増えて法人にも個人にも手元に全然お金が残らない、、」というケースは結構あります。
基本的には出資持分の増加に寄与していない非経営者であっても、当初出資額に応じて出資持分の払戻請求権は増加します(ただし、権利濫用法理が適用される場合もあります。)。
例えば、経営者Aの経営努力により医療法人の時価純資産額(≒持分全体と仮定)が設立時の1,000万円(A:500万円、B:500万円)から3億円に増加した場合、Bが経営に関与していなくてもBの持分は1億5,000万円に増加しています。Bが社員であれば社員退社による払戻請求権があります。このようなケースでBが退社による払戻請求を行うことによりAと争いになったり、Bが払戻請求をちらつかせることにより自己の要求をのませるようなケースもあります。
出資持分は「社員の退社時」か「法人の解散時」に持分の払戻(解散時は残余財産の分配)を受けることができます。そもそも社員ではない出資者は法人が解散しないかぎり持分を回収することができません。にもかかわらず、出資者が亡くなるたびに出資持分に対する相続税を納税しなければいけません。その出資者以外全員が持分放棄したら、その出資者に贈与税が課税されます。
認定を受けて持分なし医療法人への移行を検討している法人で、出資者が誰か把握できなくなってしまっていて頓挫しているケースもあります。