従来より多くの医療法人から表題のようなご質問をいただく機会が多くあります。
結論としては「持分なし医療法人でもM&Aは可能」であり、「持分なし医療法人がM&Aにおいて不利になることはない」のですが、ご質問者に掘り下げて内容をお聞きすると、ご質問者にアドバイスしているコンサルタントや専門家が表題のような内容の説明をしていたり、持分なし医療法人はM&Aにおいて不利になるといった説明をしていることが多いようです。
医療法人のM&Aのスキームとしては、「出資持分譲渡」、「社員の入退社と出資持分の払戻」、「役員退職金による清算」の3つの方法が考えられます。「持分あり医療法人」の場合はこれらの3つの方法を選択することができますが、「持分なし医療法人」の場合は出資持分自体が無いため出資持分を用いたスキームである「出資持分譲渡」や「出資持分の払戻」の方法を選択することができず、「役員退職金による清算」の方法のみ選択可能です。
これらのスキームを選択して組み合わせることが出来るという点では、退職金による清算しか選択しえない持分なし医療法人より持分あり医療法人の方がM&Aのスキームの選択肢が広がることになりますが、逆に言うと持分なし医療法人でも退職金による清算の方法をとることによりM&Aをすること自体は可能です。実際実務上では持分なし医療法人が売り法人となるM&Aの事例も多く存在します。
M&Aにおける譲渡対価(いくらで承継してもらえるのか)は、大前提として「売り手と買い手の双方が合致した金額」になりますが、その前提として「時価純資産額+営業権(のれん代)」を目安にすることが多いと考えられます。
譲渡対価の算定の基礎となる「時価純資産額」や「営業権(のれん代)」の額は基本的には持分の有無により左右されるわけではありません。
持分あり医療法人は現在は設立することができないといった「プレミア感」はありますが、そのプレミア感は本当にこだわる必要があるのか、承継にあたって持分ありでなければならない理由を掘り下げてかんがえる必要があります。
買い手にとっては持分なし医療法人の方が有利な場合があります。
事例1)買い手において将来親族が医療法人を承継する予定であり、出資持分に対する多額の相続税が課税されることを避けたい。
事例2)買い手が持分なし医療法人をすでに経営している理事長であり、合併を考えている場合。
※持分なし医療法人と持分あり医療法人が合併した場合、合併後の医療法人は持分なししか選択できませんが、もともとの持分あり医療法人の出資持分がなくなる(持分放棄)ことにより合併存続する医療法人に出資持分に係る多額のみなし贈与税が課税される場合があります。