前回のコラムでもご案内したとおり、国税庁の有識者会議における「取引相場のない株式の評価方法の見直し」の検討内容は、令和9年度税制改正大綱に向けて大詰めを迎えており、具体的な評価方法の案も徐々に明らかになってきています(参考:弊所ホームページ「【国税庁9月16日有識者会議】~具体的な計算方法~取引相場のない株式の評価方法の見直し」)。
ただ、この見直し案の内容が一部企業の事業承継において負担が増加し、事業承継に支障を来すとして、日本商工会議所や経済産業省・中小企業庁、与野党から異論や懸念が出ています。
特に優良法人の親族内承継の場面において、下記の理由により事業承継が困難になる可能性があります。
持分あり医療法人の出資持分の相続税評価額は、財産評価基本通達194‐2により基本的には株式会社と同様の方法により評価します(一部例外あり)。
国税庁有識者会議の資料では持分あり医療法人の評価方法については触れられていませんが、見直しの要因である会計検査院の指摘内容の1つが「類似業種比準価額が1株当たり純資産価額に比べて非常に低く評価され、不公平であること」から、見直し後の評価方法は持分あり医療法人にも適用されることが予想されます。
例えば株式会社での株式の相続税納税に係る納税資金確保のため、相続から3年10か月以内にその株式会社自身にその株式を譲渡した場合、所得税が軽減される特例がありますが(所得税法25条、租税特別措置法9条の7、同法37条の10、租税特別措置法施行令5条の2、復興財確法9条、同法13条)、医療法人にはこのような特例はないため、出資持分の払戻請求について総合課税で所得税が課税され(準確定申告においてみなし配当として総合課税、ただし配当控除あり)、出資持分に対して相続税が課税され(ただし、準確定申告に係る所得税について債務控除あり)、結局払い戻しを受けた金額の大半を所得税と相続税の納税に充てる結果になるだけでなく、払戻により法人内の資金が枯渇して資金繰りの悪化を招くことになります。
各種報道等では、見直し後の評価方法は令和10年から適用されることが予想されています。
株式会社においては、令和9年が期限となっている特例事業承継税制が、企業の成長や事業承継を促進するような内容となることが望まれますが、当該制度についての具体的な改正内容は今のところ明確にはなっていません。
持分あり医療法人においては、親族内承継において出資持分に係る納税が不要となる認定医療法人制度の活用が考えられますが、当該制度の期限が令和11年までであることと、例えば自由診療が多い歯科や自賠責保険収入が多い整形外科などはこの制度を使うことができないため(社会保険診療等(介護、助産、予防接種等を含む)に係る収入金額が医療保健業務による収入金額の80%を超えること)、このような診療科であっても事業承継や成長の促進が阻害されない内容に制度が改正・延長されることが望まれます。